イギリスを漢字で書くと?まずは「英」と「英吉利」の2つをおぼえよう
ニュースの見出しで「英首相」「日英会談」「訪英」── そんな言葉を見たことはありますか?じつはこの「英」、イギリスのことを表しているんです。
イギリスを漢字で書くと、大きく分けて2つの書き方があります。
- 1つ目は、短い一文字表記の「英」
- 2つ目は、長い漢字表記の「英吉利(イギリス)」
新聞やニュースでは「英」、江戸時代の昔の本では「英吉利」と書かれていました。どちらも同じ「イギリス」のことなんですよ。
この記事では、イギリスの難読漢字(なんどくかんじ)を、「英」「英吉利」「英国」、そしてもっとめずらしい「大不列顛(だいふれってん)」「諳厄利亜(あんげりあ)」まで、ぜんぶ紹介していきます。
一文字表記「英」── ニュースでよく見る漢字
イギリスの一文字表記は「英」。新聞、テレビ、外交ニュースで、いちばんよく使われる書き方です。
なぜ「英」一文字で書くようになったかというと、明治時代に、外国の国名を漢字一文字で短く表すルールができたから。たとえば──
| 国 | 一文字 |
|---|---|
| アメリカ | 米 |
| イギリス | 英 |
| フランス | 仏 |
| ドイツ | 独 |
| イタリア | 伊 |
| ロシア | 露 |
これを覚えておくと、ニュースの見出しがすごく読みやすくなります。
- 「米英首脳会談」 = アメリカとイギリスの首脳の話し合い
- 「日英自動車協定」 = 日本とイギリスの自動車のとりきめ
- 「訪英」 = イギリスをおとずれること
短くてかんたんに書けるから、見出しでも一目でわかる便利な書き方なんですね。
長い漢字表記「英吉利」── 江戸時代から使われていた音のあて字
イギリスの長い漢字表記は「英吉利」と書きます。「えいきり」ではなくて、これで「イギリス」と読むんです。
「えっ、なんでこの漢字で?」と思いますよね。じつはこれ、音をそのまま漢字に当てた書き方なんです。
- 「英」 → エイ
- 「吉」 → キ
- 「利」 → リ
つなげて読むと「エイキリ → イギリス」になります。発音にいちばん近そうな漢字を、当時の人がえらんで当てたわけです。これを「あて字」といいます。
この「英吉利」という書き方は、もともと中国でつくられて、それが江戸時代の日本に伝わってきました。福沢諭吉(ふくざわゆきち)や夏目漱石(なつめそうせき)といった昔の有名な人の本でも、「英吉利」と書かれているのを見つけることができます。
そして、この長い漢字表記「英吉利」の最初の文字「英」だけを取り出して、一文字表記ができた──というつながりなんです。
なぜ「英」になった?── じつはポルトガル語からきた名前
ところで、「England」でも「Britain」でもなく、なぜ日本ではイギリスを「イギリス」と呼ぶのでしょうか?
これは、今から約450年前、戦国時代から江戸時代のはじめに、ポルトガル人が日本にやってきたことが関係しています。
ポルトガル人は、英国(イングランド)のことを「Inglez(イングレス)」と呼んでいました。これを聞いた日本人が、「イングレス → イギリス」と少しずつ言い方を変えて、いまの「イギリス」というカタカナの名前になったんです。
そして、その「イギリス」を漢字で書くために、近い音の「英吉利」が選ばれました。
ポルトガル語「Inglez」 → 日本語「イギリス」 → 漢字「英吉利」 → 短くして「英」
という流れで、いまの一文字表記「英」が生まれたわけです。難読漢字のなかにも、こんな国際的な歴史がかくれているんですよ。
「英国」「イギリス」「UK」── 3つの呼び方をつかいわけよう
いまの日本では、イギリスのことを呼ぶ言い方が3つあります。それぞれ、使う場面がちょっとちがいます。
| 呼び方 | よく使う場面 | れい |
|---|---|---|
| イギリス | ふだんの会話、テレビ番組 | イギリス旅行、イギリス料理 |
| 英国 | 公式な文書、まじめなニュース | 英国大使館、英国王室 |
| UK | ビジネス、英語の場面 | UK進出、UK株式 |
「英国」という書き方は、「英吉利国」の頭の漢字 + 「国」を組み合わせたもの。長い漢字表記から一文字表記へと変わっていく、その途中(とちゅう)のすがた、ともいえますね。
学校の教科書では「イギリス」、政府の文書では「英国」、サッカーや音楽のニュースでは「UK」── ぜんぶおなじ国を、いろんな書き方で呼んでいるわけです。
他のイギリス漢字表記:大不列顛、英倫、諳厄利亜
「英」「英吉利」「英国」のほかにも、じつは昔の本では、もっとめずらしいイギリスの漢字表記がいくつもあったんです。これらは、今では使わない超難読漢字ですよ。
大不列顛(だいふれってん/ダイブリテン)
「Great Britain(グレートブリテン)」を音で漢字にしたもの。明治時代の地理(ちり)の本などに出てきます。
英倫(えいりん)
「英吉利」をもっと短くしたもの。「英倫敦(えいろんどん)」のように、地名と組み合わせて使われることもありました(ろんどん=ロンドン)。
諳厄利亜(あんげりあ)
これはかなりめずらしい書き方。江戸時代のいちばん古い蘭学(らんがく)の本(オランダから入ってきた学問の本)に出てきます。
こんな難読漢字が、昔は当たり前に使われていたんですね。今では辞書を引かないと読めないものばかりです。
世界の国名漢字をまとめて見てみよう
イギリス=英(一文字表記)、英吉利(長い漢字表記)── この2つを覚えたあなたは、もう世界の国名漢字の入り口に立っています。
ほかの国の漢字も、まとめて見てみましょう。
| 国 | 一文字表記 | 長い漢字表記 |
|---|---|---|
| アメリカ | 米 | 亜米利加(あめりか) |
| フランス | 仏 | 仏蘭西(ふらんす) |
| ドイツ | 独 | 独逸(どいつ) |
| イタリア | 伊 | 伊太利亜(いたりあ) |
| ロシア | 露 | 露西亜(ろしあ) |
| ポルトガル | 葡 | 葡萄牙(ぽるとがる) |
| スペイン | 西 | 西班牙(すぺいん) |
| オランダ | 蘭 | 阿蘭陀(おらんだ) |
主要な国の一文字表記だけでも覚えておくと、新聞・ニュースの読解速度がぐっと上がります。「日米英仏独」が「日本・アメリカ・イギリス・フランス・ドイツ」と頭ですぐに展開できるようになると、世界のニュースがもっと身近に感じられますよ。
そして長い漢字表記まで覚えると、明治・大正時代の文学や歴史の本が読めるようになります。「英吉利の首相」「亜米利加の独立」── 同じ意味でも、漢字音訳には独特の風格があります。
国名漢字は、難読漢字のなかでも、ちょっと謎解き(なぞとき)みたいで楽しいジャンル。1つずつ覚えていくと、いつのまにか世界の漢字博士になれます。