月は自分では光らない

最初に押さえておきたいのは、月は自ら光る天体ではないということだ。私たちが見ている月の輝きは、太陽の光が月面で反射した光である。

つまり、月の「明るい部分」と「暗い部分」は、太陽の光が当たっている面か当たっていない面かの違いに過ぎない。月の半分は常に太陽光に照らされていて、もう半分は影になっている。私たちが地球から月を見るとき、その両方の面が見える角度によって、月の見かけの形が変わって見える。これが「満ち欠け」の正体だ。

4つの位相、その瞬間の意味

月の位相は次の4つを基本とする:

位相別名太陽との位置関係
朔(さく)新月月と太陽が同じ方向
上弦(じょうげん)半月月が太陽の90°東
望(ぼう)満月月と太陽が反対側
下弦(かげん)半月月が太陽の90°西

国立天文台の定義では、朔・上弦・望・下弦は**「太陽と月の黄経の差が0°・90°・180°・270°になる瞬間」**と定められている。日付ではなく「瞬間」を指す点に注意したい。

「2日の謎」── 27.3日と29.5日

ここからが本題だ。月が地球の周りを公転する周期、つまり月の公転周期は約27.3日(恒星月と呼ぶ)。ところが満ち欠けの周期は約29.5日(朔望月、正確には29.530589日)。なぜ2日もずれるのか?

答えは「地球も動いている」ことにある。

月が公転して新月の位置から1周(27.3日かかる)して同じ位置に戻ってきても、その間に地球は太陽の周りを公転して位置を変えてしまっている。つまり、地球から見た太陽の方向も変わっているので、「太陽と月が同じ方向」という新月の条件を満たすには、月はあと約2日分、追加で公転する必要があるのだ。

これが27.3日と29.5日の差の正体である。

月食と満ち欠けは別物

よくある誤解として「月が欠けるのは地球の影に入るから」というものがある。実はこれ、間違いだ。地球の影に入る現象は月食といい、満ち欠けとは全く別のメカニズム。

両者を見分けるポイント:

  • 満ち欠け: 欠けている部分の境界は、毎日変化する。半月のときは直線になる
  • 月食: 欠ける境界は常に円弧(地球の丸い影の形)

月食は満月の夜にしか起こらず、しかも年に数回しかない珍しい現象だ。

なぜ常に「うさぎ」が見える?

もうひとつ面白い事実がある。私たちは、地球上のどこから月を見ても**いつも同じ模様(俗に「うさぎ」と呼ばれる海と高地のパターン)**を見ている。月の裏側を地上から見ることはできない。

これは月の自転周期と公転周期がぴったり一致しているためで、「潮汐ロック(同期回転)」と呼ばれる現象。地球の重力が長い時間をかけて月の自転にブレーキをかけた結果、こうした同期状態が完成した。月の裏側が初めて撮影されたのは1959年、ソ連のルナ3号によってだった。

月の周期は変動する

最後に細かい話を一つ。朔望月の「約29.5日」は平均値で、実際は29.3日から29.8日の間で変動する。月と地球の軌道はいずれも楕円(ケプラー第2法則に従う)であり、近地点・遠地点で公転速度が変わるため、満ち欠けの周期も季節や月の軌道の向きによって少しずつ変化するのである。